こんにちは、モバイルファクトリー(以下、モバファク)でプランナーをしているコーイチ(@apple_51)です!
私は今年新設されたAI Labチームで生成AIのリスキリング施策を担当しています。このチームでは、社員が生成AIを用いて業務効率化に取り組む支援をすることをミッションとしています。
「生成AI、使えるようになると非常に便利なので使っていきましょうね!」と伝えていくお仕事です。
ちなみに、私が担当になったのは、生成AIの知見があったからではありません。新卒入社して2年間はブロックチェーンチームのプランナーとして企画営業や制作進行に携わっていました。
ChatGPTについては世に出たタイミングから面白いな~と思ってずっと触っていた程度で、大学も建築学科出身です。(笑)
社内に生成AIに関する専門人材がいなかったため、セミナーへの参加やさまざまなツールの検証を通じて学び、得られた知見をもとにリスキリング施策を立ち上げました。
モバファクでは、社内のみからアクセスできる社内版ChatGPTを全社員に提供しています。上の図は、2024年6月と9月時点での利用回数の比較です。施策の効果もあり、3ヶ月で約3倍の成長という短期間でかなりの効果を得ることができています。施策終了は2024年12月を予定していますが、更なる成長が期待できるので、今のところ順調だといえそうです。
実施した施策については全てが予定通りではなく、試行錯誤を経験して現在の結果に繋げることができました。
この試行錯誤で得られた知見を「同じように生成AIのリスキリングに取り組もうとしている方へお届けしたい」「既に実践されている方と情報交換をしたい」という想いで、連載形式で発信をしようと思います。
ぜひ温かく見守ってください。
ブログのテーマ:SWAT施策
これから数回の連載は、生成AIによる社内業務効率化を目的としたリスキリング施策の中で、私が主に担当した「SWAT施策」について発信していきます。
SWAT・・・?
特殊部隊なのか・・・?
と思ったあなた。正解の反応です。
この施策は
「社内の各チームから選抜メンバーを集めて、生成AI利用促進に向けた特殊部隊を作ろう!」
というものです。
あらゆる検討を行った結果「少人数のAI Labチームでも、やり方次第で全社の生成AIリスキリングは完全内製で行えるだろう」という結論に至りました。
モバファクのような、チームが多岐にわかれる小規模のIT企業であれば、半期にわたって状況に応じたカスタマイズが利く内製施策が良いと考えた次第です。大規模な組織の場合は、外部コンサルティングを受けるのも効果的かもしれません。
これから連載で公開していくノウハウは、主に以下に当てはまる方向けの内容となっています。
- 社内で生成AIの活用担当になったが、どうプロジェクトを進めたらいいかわからない
- 生成AIのリスキリングに興味はあるが、リソースやコストをそこまで割くことができない
具体的な手法の前に、今回の記事では、私たちがどうしてこの施策に取り組むに至ったのかについて書きたいと思います。
現状分析と戦略
モバファクは社員全員の顔と名前が覚えられ個別にアプローチしやすい組織です。しかし、リモートワークの影響もあり普段接点のないチームの利用状況を把握する機会はあまりない状況でした。
そこでアンケートを実施し、現状を分析しました。
結果、2024年3月の時点で次のようなことがわかってきました。
- 50%以上が「利用なし」と回答し、その理由には「どのように使えばいいのかわからない。」という回答が目立つ。
- 一部のヘビーユーザーの利用回数が全体の約8割を占めている。
この結果を受け、当初は勉強会の開催や「AIかけこみ寺」という毎日1時間ほどオンラインミーティングに自由に出入りして相談できる場を設けました。しかし、メンバーの自主性に期待するアプローチだと、参加者の固定化という課題が出てきました。
次に、この課題を解決するため、生成AIの活用レベルを表す指標をつくりました。
この指標により
「ステージ3のなかでも特に3-2は現在非常に少ないよね。」
「ステージ2-1がボリュームゾーンになっているから、ここをターゲットにしていきたい。」
「ステージ1は生成AI の利用に興味がない、もしくは懐疑的なのでステージを上げるには労力がかかるな。」
などの議論が生まれ、ターゲットが明確になり戦略が立てやすくなりました。
それでは、このボリュームゾーンの社員を具体的にどう変化させていくのか。
勉強会などの啓蒙活動では効果が薄かったため、一方的な教育よりも、現場の業務を理解している人材を巻き込む方が良いのではないかと考えました。
そこで、AI Labチームがステージ3相当のメンバーを育成し、育成されたメンバーが現場社員に知識を共有する仕組みが良いのでは、という結論にいたりました。そしてこれをSWAT施策と名付けました。
このような少人数のチームをつくるSWAT施策の着想は、ゼロから考えたのではなく、数多くの生成AIセミナーを受講する中で度々耳にしており、社内の状況と今までの知見を総合的に鑑みた結果、モバファクにとってベストな施策になると考えました。
なお、「SWAT」という言葉は元来アメリカの警察などにおける特殊部隊の名称ですが、セミナーでもこの言葉で紹介されていたことや、名前がキャッチーで少数精鋭で取り組むイメージがしやすいことからSWAT施策という名称を採用しています。
メンバーの選定について
実際にSWAT施策に参画してもらうメンバーの選定には、以下の条件を意識しました。
- 生成AIの活用に挑戦的であること
- 得られた知見を周囲に発信してくれる影響力があること
- 自チームの業務に慣れていること
また、より現場の作業と生成AIの親和性を見つけやすいという視点から、管理職ではなく現場で中心的な役割を果たしている人材を各チームより選びました。
当初はメンバー全員で同時スタートを予定していましたが、各チームのリソースの都合もあり、1期生・2期生に分けて実施することになりました。
1期生:人事、経理財務、法務、コンテンツ制作、デザイナー(計6名)
2期生:エンジニア(計4名)
また、リソースが取れずにSWAT施策に参画できなかったチームに関しては、個別の相談対応や全社向け勉強会などを実施してフォローしています。
生成AIの社内導入は人材開発!?
「生成AIの社内導入は人材開発である。」
これは私の現時点での見解です。
SWAT施策を始める前、私は「社内に生成AIを利用できる環境を用意して、基本的な使い方を教えればある程度利用されるようになるだろう」と考えていましたが、実際にはそう簡単ではありませんでした。
生成AIの利用につながらないケースでは以下のようなマインドセットが見られました。
- 忙しいので新しいことを試す余裕がなく、今までのフローでやった方が負担が少ない
- 期待通りの回答を得られないため、修正の分だけ余計に時間を浪費する
もちろん緊急の案件では、従来のフローの方が早くて安全な場合もありますが、このマインドセットで固定されてしまうと新たな一歩を踏み出しづらくなってしまいます。
重要なのは、ただツールを導入するだけではなく、社員一人ひとりに生成AIの価値を理解してもらい、どのように業務に活かせるか考えるきっかけを与えることです。
つまり、生成AIの導入は単なる環境整備ではなく、社員のマインドセットを変革する「人材開発」のプロセスそのものだと感じています。
おわりに
今回は、AI Labチームの組成からSWAT施策実施に至るまでの経緯をご紹介させていただきました。
次回は、マインドセットを変えていくために私たちが制作したSWAT施策のカリキュラムについて書こうと思います。
また、私たちと同じように社内のリスキリングに取り組んでいらっしゃる担当者様がいれば、ぜひ情報交換をさせてください。XのDMまでご連絡ください!
ここまで読んでいただきありがとうございました。
ぜひ次回も見ていただければと思います。
使用した生成AI
・ヘッダー画像:Adobe Firefly
・記事中の画像:Claude
・文章の校正校閲 / タイトル案のアイデア出し:社内版ChatGPT