こんにちは、モバイルファクトリー(以下、モバファク)でプランナーをしているコーイチ(@apple_51)です!
前回は全社横断の特別チームをつくって生成AIのリスキリングに取り組む「SWAT施策」について触れましたが、今回は本施策のカリキュラムやその中で実施した研修についてご紹介しようと思います。
カリキュラムの全体像
モバファクで実施しているSWAT施策のカリキュラムは、「チームビルディング期間」と「検証期間」の2つで構成されています。
本施策のゴールは、メンバーが各自の現場の業務効率を改善することです。
そのためには、「現場業務に精通したメンバーが、目的を理解したうえで自律的に動ける仕組み」を作ることが必要です。
自律的な行動を促すには、以下のステップを道標として示す必要があると考えました。
- 基礎スキルの習得
- 定常業務の洗い出し
- 効率化に向けた検証
- 各現場への浸透
そこで、3回の研修とフォローアップを行い、業務効率化の検証期間を設けるカリキュラムを作成しました。すべての業務に生成AIが有効活用できるとは限りませんので、検証で成果が確認できたものを、現場に業務フローとして反映する仕組みにしています。
また、メンバー間で進捗やノウハウを共有し、さまざまな視点で効率的に検証を進められるよう、検証期間中には「定例ミーティング」を実施することにしました。
こうして完成したのが、現在のSWAT施策のカリキュラムです。
今回はこのカリキュラムの中でも、チームビルディング期間の研修とフォローアップについて書きたいと思います。
研修1回目:ビジョンの共有
研修1回目は、ビジョンの共有とメンバーの顔合わせを行いました。
- どうしてSWAT施策を行うのか
- 施策のゴールは現場の業務効率化であること
- メンバーに期待する役割
これらの議題を中心に、施策の目的と自身の役割を認識してもらいました。
また、アイスブレイクにも時間をかけることで、メンバー間で情報共有しやすいチーム作りを目指しました。
研修2回目:社内版ChatGPTの基礎的な使い方
2回目の研修では、社内版ChatGPTをメンバーが十分に使いこなせるよう、予習・実践・復習の構成で実施しました。
予習
研修が始まる前に、メンバーには基礎的な理論に関する講義動画を視聴してもらいました。
主な内容は以下の通りです。
- 生成AIとは何か?ChatGPTとは何か?
- ChatGPTが文章を作成する仕組み
- 利用上の注意事項
- プロンプトエンジニアリングの手法
生成AIの歴史や技術的な詳細は省略し、短期間でメンバーが生成AIを有効活用できる能力を習得することに重点を置きました。
実践
当日は以下の狙いで、2チームに分かれてグループワークを実施しました。
- 予習した内容のアウトプットの場を設ける
- 他のメンバーの意見を聞くことで活用の幅を広げる
- AI Labメンバーが各メンバーの現在の活用レベルを把握する
テーマは「社内版ChatGPTで実現可能だと思われる、業務効率化アイデアを考えて発表してください。」という内容です。
実際に2つのアイディアが発表されました。
- 決算資料を元に、決算説明会での想定質問のアイデア出しをする
- 発注書を元に、稟議申請に記載する内容を作成させる
序盤は思った通りの出力が得られず、苦戦する姿も見られました。
しかし、予習で学んだ「プロンプトエンジニアリングの手法」を試したり、指示文を変化させたりすることで少しずつ理想の形に近づけていきました。また、メンバー間で使い方を教え合ったり、チームワークを発揮して議論を前に進めたりする様子が見られ、受講後のアンケートでも「良い刺激になった」という感想が寄せられました。
復習
実践後は、「社内版ChatGPTの使い方100本ノック」という宿題を設けました。
さまざまな切り口のプロンプト一覧を渡し、実際にどのような出力が得られるかを各々が確認するというワークです。
生成AIの理論を学ぶことも重要ですが、実際に多様なプロンプトを試すことで、生成AIが得意なことや苦手なことを把握し、プロンプトエンジニアリングのコツを掴むことができます。
この取り組みは大きな効果を生み、研修後のアンケートでは「理解が深まった」という感想が多く寄せられました。
さらに、この100本ノックはSWATメンバーが現場社員を教育する際にも使われており、全社的な利用率向上にも貢献しました。
研修3回目:業務分解ワーク
最後の研修では、メンバーが自身の現場で行う業務を詳細に分析し、専用のシートに記録する「業務分解ワーク」を実施しました。
定常業務にどれだけの時間と労力を費やしているかを把握することは、業務効率化を図るための重要なステップです。また、小さくても成功体験が得られそうな業務を発見することで、モチベーションを向上させる狙いもありました。
また、継続的にワークを行うことで、改善後のワークフローが工数削減にどれだけ貢献したかを定量的に評価できます。さらに、効率化に向いている業務の種類を見極めることも可能です。
フォローアップ
研修からスムーズに検証期間へ移行するため、各メンバーと個別にミーティングを実施しました。
結果として、この準備期間は非常に有意義でした。
グループ研修ではどうしても形式的になりがちですが、個別の1対1ミーティングではお互いの考えや不安を密に共有でき、検証開始前に的確なサポートを行うことができました。
2期生の研修変更点
メンバーは2期生までおり、1期生は多様な職種が参加する一方で、2期生はエンジニアのみで構成されています。
カリキュラムのベースは同じですが、職能に合わせて一部を変更をしました。
- 100本ノックにエンジニアが活用しやすいプロンプトを追加
- 業務分解ワークは行わず、ブレインストーミング形式で「効率化したい困りごと」を洗い出す
また、専門性の高いエンジニア固有の悩みが出てることが想定されるため、ファシリテーターをAI Labチームのエンジニアのマネージャーに務めてもらいました。
おわりに
今回は、SWAT施策のカリキュラムをご紹介しました。
SWAT施策のカリキュラム検討から研修までの動きを通して得られた学びは以下のとおりです。
- 教育者は必ずしも生成AIの専門家である必要はなく、基礎的な知識や利用経験があればカリキュラムの組み立てとメンバーへの教育が可能。
- 想定通りにいかない場面もあるため、メンバーの成熟度や置かれている状況に応じて内容を柔軟に調整することが重要。
- 参加者がゴールを理解して自律的に動けることが何よりも重要。そのためには、生成AI推進担当者がメンバーの悩みを把握し、伴走できる環境づくりが大切。
次回は、検証期間の具体的なワーク内容を書こうと思います。
また、私たちと同じように社内のリスキリングに取り組んでいらっしゃる担当者様がいれば、ぜひ情報交換をさせてください。XのDMまでご連絡ください!
ここまで読んでいただきありがとうございました。
ぜひ次回も見ていただければと思います。
使用した生成AI
・ヘッダー画像:Adobe Firefly
・記事中の画像:Claude
・文章の校正校閲 / タイトル案のアイデア出し:社内版ChatGPT