こんにちは、モバイルファクトリー(以下、モバファク)でプランナーをしているコーイチ(@apple_51)です!
この連載では、全社横断の特別チームをつくって生成AIのリスキリングに取り組む「SWAT施策」について紹介しています。
前回までの記事はこちら:
前回はSWAT1期生が取り組んできた検証事例を紹介しましたが、今回は2期生の事例を紹介します。
SWAT施策の2期生とは
SWAT施策の2期生は、全員エンジニアで構成されています。日常業務の中で効率化できると感じた点を洗い出し、ワークフローを見直しました。1期生は多くの身近なタスクを効率化した一方で、2期生は検証に時間がかかる大型タスクに絞って実施し、より高い工数削減率を目指し合計17件のユースケースを作成しました。
本記事では、その中から代表的な事例をピックアップして紹介します。
Slackのログから障害報告書を作成
by:dorapon2000氏
モバファクでは、サービスの障害時に障害報告書を作成します。これは突発的なタスクで、「期限が明確でないため後回しになりやすい」「執筆者次第で情報の粒度が異なりがち」という課題がありました。
1.ユースケースの紹介
障害報告書の作成を効率化:障害発生時は専用のSlackチャンネルを中心にコミュニケーションを取っており、記載された調査ログを元に障害報告書を書いています。この取り組みを半自動化しようという試みです。
具体的には、以下の流れです。
- Slack上のテキスト情報を社内版ChatGPTに入力
- 併せて障害報告書のフォーマットも与えて参照させる
- 報告書の草稿を生成させる
また、SlackのAPIを使用することで関連するテキスト情報をワンクリックで収集できる仕組みを実現しました。
2.得られた効果・気づき
- 半日~1日かかっていたタスクを数時間単位で時短可能な見込み
- 手作業だと面倒なタイムスタンプなども自動で入力できる
- 報告書作成に着手するまでの心理的ハードルが下がる
このワークフローを導入してから、障害は1回しか発生しておらず、具体的な時短効果についてはまだ評価が難しい状況ですが、障害の深刻度によっては数日単位での時短ができる可能性があると考えています。
3.苦労したこと
- 生成AIがログにない情報を勝手に補完してしまう場合がある
- 障害発生時の調査ログ自体をより充実させる必要がある
注意すべきは生成AIの「ハルシネーション(誤情報生成)」です。このリスクをできるだけ減らすため、プロンプトに「元の情報から読み取れない箇所は無理に入力せずに、空欄のまま出力をして欲しい」という旨を記載しています。また、生成AIにプロンプトのレビューと推敲を何度も行わせ、求める出力が得られるよう品質を向上させました。
負荷分析会のドキュメント作成を効率化
by:xztaityozx氏
負荷分析会とは、私たちのチームがアプリケーションの信頼性とパフォーマンス向上を目指し、週1回開催している会議です。この会議では、各担当者が雛形に追記した内容をもとに情報共有を行っています。現在、執筆者の偏りや属人性を減らすため、担当者をローテーションしています。しかし、作業はすべて手作業のため、担当者によってドキュメントの質にばらつきが生じるという課題があります。
1.ユースケースの紹介
負荷分析ドキュメントをプログラム実行から作成:利用しているサービスのAPIと連携し、一度プログラムを実行するだけで必要な情報を自動で取得できる仕組みを構築しました。
APIから取得している情報の例は以下です。
- メンテナンス・パッチ情報
- セキュリティ・推奨事項情報
上記だけでは報告書として活用するには不十分なため、生成AIを用いてフォーマットに合わせた文章化を行っています。また、プロンプトの工夫により、サービス名称の記載方法等のルールを明確化し、精度を向上させています。
イメージとしては、素材(データ)の収集をプログラムが担当し、その素材を調理して実用的な形に仕上げる作業を生成AIに任せる、といった感じです。
2.得られた効果・気づき
- 30分かかっていたタスクを5分程度で完了
- 見逃しがちだった通知にも対応できるようになりクオリティも向上
3.苦労したこと
- フォーマットに存在しない情報が勝手に追加される
- ワークフローの中で「プログラムで実行すべき部分」と「生成AIで要約させる部分」を適切に使い分ける必要がある
上述のdorapon2000氏の内容と重複する、生成AI特有の課題です。また、生成AIが出力した内容をそのまま成果物として使用するのではなく、それを起点として人間が修正・補完する視点を持つことが必要であると感じています。
推進担当者としての視点
2期生は大きなワークフローの改善に向けて、じっくり取り組んでいただきました。この取り組みは、すぐに結果が出るものではなく、試行錯誤が求められる場面も多くありましたが、「生成AIにどこまで任せるべきか」というラインを見極めつつ、着実に検証を進めることができたと考えています。
SWATメンバーの皆さん、本当にありがとうございました!ここでは紹介しきれなかった事例も、非常に興味深いものばかりです。
次回、最終回では、SWAT施策で得られた結果を数値データとともに紹介します。
また、私たちと同じように社内のリスキリングに取り組んでいるご担当者様がいらっしゃいましたら、ぜひ情報交換をさせてください。XのDMまでご連絡ください!
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回もぜひご覧ください!
使用した生成AI
・ヘッダー画像:Adobe Firefly
・文章の校正校閲 / タイトル案のアイデア出し:社内版ChatGPT
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